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【共同研究成果】唾液採取の代替として、洗口吐出液から口腔内代謝物質の検出・評価が可能であることを実証し、 その成果が科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました!

腸内環境を適切にデザインすることで病気ゼロの実現を目指す株式会社メタジェン(本社:山形県鶴岡市、代表取締役社長CEO 福田真嗣)、日吉歯科診療所(山形県酒田市、院長 熊谷崇)、ライオン株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役社長 掬川正純)からなる研究グループは、以前開発した口腔内細菌叢の採取方法と同手法を用いて口腔内代謝物質の評価を行い、既存の唾液採取法と同程度の解析結果が代謝物質でも得られることを明らかにいたしました。その研究成果が科学雑誌「Scientific Reports」に英国時間1月13日午前10時(日本時間13日午後7時)付で掲載されました。

口腔内細菌叢(※1)は歯周病などの口腔疾患の一因となるだけでなく、炎症性腸疾患や大腸がんなどの腸管関連疾患とも関係することが報告されています。口腔内細菌叢の採取には唾液を用いることが一般的ですが、採取に時間がかかることや、ヒトによっては唾液が出づらい点など、いくつかの課題がありました。この課題に対して、同研究グループは2019年、唾液採取の代替手法として、洗口吐出液(※2)から口腔内細菌叢プロファイルを取得できることを見出し報告いたしました

唾液には多様な代謝物質が含まれており、様々な疾患に関連していることが知られています。本研究では、口腔内細菌叢だけでなく、口腔内代謝物質の解析において洗口吐出液採取が唾液採取に変わる妥当な手法となるのか検証いたしました。

健常な日本人10名を対象とし、①安静時唾液(安静状態で口内に溜まった唾液)、②刺激時唾液(パラフィンガムを噛んで溜まった唾液)、③洗口吐出液のサンプルを取得し、CE-TOFMS(※3)を用いて代謝物質の測定と比較解析を行いました。その結果、洗口吐出液は唾液とほぼ同種類の代謝物質を含むことがわかりました(約80%)。また、洗口吐出液に含まれる多くの代謝物質量の特徴は安静時唾液の特徴と類似していました。これらの結果から、口腔内代謝物質解析において、洗口吐出液は唾液の代替物として適切である可能性が示唆されました。

本共同研究により、洗口吐出液が口腔内代謝物質解析においても有効なツールとなる可能性が見出されました。今後さらなる研究を行うことで、口腔内細菌叢および口腔内代謝物質との関連が報告されている疾患の機序解明につながることが期待されます。

今後も株式会社メタジェンは、ヒト常在細菌叢と人々の健康・疾病予防との関連を紐解き、最先端科学で病気ゼロを実現すべく、更に邁進してまいります。


<論文に関する情報について>
【タイトル】
Comparison of oral metabolome profiles of stimulated saliva, unstimulated saliva, and mouth-rinsed water
(刺激時唾液、安静時唾液、洗口吐出液の口腔内代謝物質プロファイル比較)

【著者名】
Yuki Maruyama, Yuichiro Nishimoto, Kouta Umezawa, Ryosuke Kawamata, Yuko Ichiba, Kota Tsutsumi, Mitsuo Kimura, Shinnosuke Murakami, Yasushi Kakizawa, Takashi Kumagai, Takuji Yamada & Shinji Fukuda
丸山由貴(ライオン株式会社)、西本悠一郎(株式会社メタジェン)、梅澤幸太(日吉歯科)、川俣亮介(ライオン株式会社)、市場有子(ライオン株式会社)、堤康太(ライオン株式会社)、木村光夫(ライオン株式会社)、村上慎之介(株式会社メタジェン)、柿澤恭史(ライオン株式会社)、熊谷崇(日吉歯科)、山田拓司(株式会社メタジェン/東京工業大学)、福田真嗣(株式会社メタジェン/慶應義塾大学/神奈川県立産業技術総合研究所/筑波大学)

【掲載誌】
Scientific Reports

【掲載日】
2022年1月14日

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-021-04612-x

【リンク先】
https://www.nature.com/articles/s41598-021-04612-x

【用語説明】

※1 口腔内細菌叢:
口腔内に生息する細菌群集。その種数は数百種類で、唾液1mlあたり約10億個の細菌が生息していると見積もられている。

※2 洗口吐出液:
3 mLの蒸留水で口腔内を10秒間洗口したのち、吐出した液。

※3 CE-TOFMS:
キャピラリー電気泳動(CE)を質量分析計(TOFMS)に接続した分析装置。主に水溶性かつイオン性の代謝物質の分析に適している。


【リリースに関するお問合せ先】
株式会社メタジェン
〒997-0052
山形県鶴岡市覚岸寺字水上246番地2
担当:中畔
E-mail: info@metagen.co.jp
TEL:0235-64-0330